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Working Together

桑(くわ)の物語

静岡県松崎町――海と山に囲まれたこの小さな町は、長い歴史の中で農業や漁業を営み、豊かな自然と共に暮らしてきました。しかし今、松崎町は全国の地方と同じ課題に直面しています。若者が都市へと流出し、地域の活力をいかに守り続けるかという問題です。

そこで立ち上がったのが、松崎町の有志たち。農家や漁師、かつて都会で働いていた人々など、さまざまな背景を持つ仲間が集まりました。目標はひとつ――地域に新しい雇用と誇りを生み出し、次世代に受け継ぐこと。その答えは、この土地に古くから根付いてきた「桑(くわ)の木」にありました。

日本文化を支えた桑の木

桑の木は、養蚕に欠かせない存在です。その葉は蚕の唯一の食べ物であり、上質な葉はやがて強く美しい絹糸を生み出します。日本各地では、長い年月をかけて桑の葉の質を高め、世界でも有名な絹産業を築き上げてきました。

しかし、石油を原料としたナイロンなどの合成繊維が登場すると、絹の需要は急速に減少しました。かつて地域の基盤を支えた桑畑は次々と姿を消し、その伝統は忘れられつつありました。

伝統から未来へ

松崎町の人々は、桑の木を「過去の遺産」ではなく「未来の資源」として見直しました。近年の研究により、桑の葉には血糖値の安定や消化の改善など、健康を支える成分が豊富に含まれていることが分かっています。そこで、桑の葉を収穫・乾燥・加工し、自然由来の健康食品「桑パウダー」として提供する取り組みが始まりました。

桑パウダーは単なる商品ではありません。地域の人々の努力と希望の結晶であり、「地方の暮らしを守る」という想いそのものです。

松崎から世界へ

松崎町の挑戦は、日本だけでなく、世界中の農村が抱える課題とも重なります。伝統を守りながら新しい価値を生み出し、若い世代に未来を託す。その実例として「桑」は、地域再生のシンボルとなっています。

皆さまが「桑」を手に取ることは、健康への一歩であると同時に、この町を支える人々の想いに応えることでもあります。